速さの足し算引き算
もうひとつは、止まっている電車 B に乗っている人が走っている電車 A の中での音や弾丸がどの様な速さで伝わっているように見えるか、
ということです。電車 A の中で右に進むものは、電車の速さが足し合わさって、速い速さで進むように見え、左に進むものは、電車の速さを
差し引いてゆっくり進むように見えるはずです。このように速さの足し算とか引き算が行われ、それが止まっている人から見た速さになります。
問題設定-1-
話を次に移します。
相対性理論では「誰が観察しても光の速さは一定である」という前提(これを光速度不変の原理といいます。)で考えます。この前提に基づいて、
同じ問題を考えるとどうなるでしょうか。すなわち、観測者に対して、電車 A は走っていて、観測者と同じように止まっている電車 B の横を
通り過ぎるとします。ちょうど、真横で隣りあったとき電車の中央から両端に向かって光が照射されるとしましょう。光はどのように電車の両端
に届くでしょうか。
電車 B の場合
止まっている電車 B では、当然、同時に両端に達します。ただし、注意しなければならない点があります。それは、「同時に両端に達する」と
いうことを観察するのは、地上 あるいは 止まっている電車 B に乗っている観察者が観察しているという点です。これは忘れがちな重要な点です。
しかし、後で重要になってきます。
電車 A の場合
それでは、動いている電車 A ではどうでしょうか。上に書いたように、地上 あるいは 止まっている電車 B に乗っている観察者が観察している
場合を考えましょう。すると、照射される光は、空気の速さも、光源の移動速度も関係なく、止まっている観測者から見て一定の速さで進むので、
下のアニメーションのように進みます。左側の端には、右側の端よりも先に光が到達するでしょう。
※ 左下の三角の印をクリックしてください。
問題設定-2-
同じ現象を、移動している電車 A に乗っている観測者から観測したらどうなるでしょうか。
電車 A の場合
今度は、電車が止まっていると観察されます。この観察者に対して、光は一定の速さで進むのですから、光は同時に両端に達します。
電車 B の場合
今まで止まっていたと考えていた電車 B が今度は動いていることになります。電車 B の中で照射された光は、やはり、空気の速さも、光源の
移動速度も関係なく、電車 A に乗っている観測者から見て一定の速さで進むので、下のアニメーションのように進みます。そこで、右側の端
には、左側の端よりも先に光が到達するでしょう。
※ 左下の三角の印をクリックしてください。
ここまでのまとめ
ここまでの結果をまとめてみます。強調したいのは、常識とは異なる驚くべき事実です。同じ現象を電車 A に乗って観察する場合と電車 B に
乗って、あるいは地上から観察する場合とで違って見えるということです。電車 A に乗って観察すると、電車 A では光は両端に同時に届き、
電車 B では、右の方が先に端に光が届きます。電車 B に乗って観察すると、今度は、電車 B で、光は両端に同時に届きます。一方、電車 A
では同時ではなく、左端の方が先に光が届きます。このように、何が同時で、どちらが先に起こったことか、ということが、立場(電車 A に
乗っているか B に乗っているか)によって変わってきてしまうのです。